モモ

20XX年10月30日

ここ最近の夫の動向により、夜はよく眠れていなかった。

朝起きて、ベッドでボンヤリしていると、なんとなく、いつもと違うというような感覚が走った。

ふとベッドの横を見た。

ベッド横には本棚を置いていて、そこに置いた覚えのない息子の本があった。

「時間泥棒モモ」

オレンジ色のブックカバーを見て、不審に思う。

その本棚には私の本しか入れていない。

なぜ、ここに息子の本が突然あるのだろう。

思わず手に取ってみると、ゴトリと鈍い音がした。

妙な重みを感じて、また恐怖心が沸き立つ。

「モモ」のカバーに入っていたのは、本ではなく、またしても小さな機械だった。

動悸が止まらないまま、カバーの中身を見ると、白くて小さなカメラがテープで止められていた。

よく見ると、「モモ」のカバーの「モ」の字の真ん中の部分が小さく切り取られていて、その部分にカメラのレンズがくるように、小型カメラが設置されていたのだった。

余りの恐怖に手が震えた。

カメラから伸びた電源コードは、見えないように、本棚の裏手を通り、普段使っていないコンセントに繋がれていた。

私は急いで、携帯でカメラの写真を撮り、電源を抜いた。

もしカメラが蓄電されていて盗撮されたら怖いので、「モモ」の穴に、またもやティッシュをちぎって丸めて詰めた。

夫も息子もリビングにいる。

叫びたいほどに怖いが、犯人はすぐそばにいるのだ。

しかし、騒ぎ立てても、夫は白を切るだろうし、息子の面前で夫を責め立てるのは、、、。

様々な思いが交錯し、考えがまとまらない。。

でも、、、これは犯罪とかにならないの?!

とにかく、冷静になりたくて、私は外に出た。

どうしたらいいかわからず、マンションの前で姉に電話をした。

姉も仰天である。

これまでもずっと相談にのってくれていた姉であるが、ここ最近の夫の動向を聞き、私以上に恐怖を感じている。

「すぐ、その家を出て!!

殺されてちゃうかもしれないよ、、、?!

異常だよ!!

しかし、、本当に夫の目的がわからない。

私にGPSを仕込んだり、家での様子を盗撮しようとしたり、携帯を盗み見ようとする等、、、

見られてやましいことは何もないが、とにかく気持ち悪いし、恐怖である。

私の外出先の場所を知ったり、家で寝たりご飯を食べたりしているところを盗撮して、一体、何になる、、、、?!

殺されることはないと思うが、、、気分はよくない。

家を出るべきか、、、?

でも、息子はどうする?

ここ最近は、夫の息子に対してのモラハラは激減している。

夫が息子を怒らないようにしているのかもしれないし、もしくは、息子が要領を得て、夫が怒らないように立ち回れるようになったようにも見える。

思えば、息子は最近、私に近寄らなくなった。

以前は、息子は夫から暴言を受けると、泣いたり、私の方に寄って来た。

息子が悲しい想いをすると、私は息子以上に悲しい気持ちになるので、私たちは肩を寄せ合い、悲しみを分かち合い、乗り越えようとしてきた。

それがいつからか、気づかないくらいゆっくりしたペースで変化してきた。

私が朝から晩まで仕事に出るようになったからかもしれない。

息子が辛い思いをしている状況に、私が立ち会うことがなくなり、息子は一人でその状況を切り抜ける経験が増えたのかもしれない。

それは、息子は夫の気分に合わせられるようになった、ということなのかもしれない。

いつも間にか、息子は私にくっついてこなくなり、夫のそばにいる時間が増えていった。

私は、息子と一緒に暮らすために、急いで仕事に就き、頑張って働くようになったが、それと同時に、息子との時間が失われ、息子は夫との時間を増やしていったのだ。

皮肉な出来事。

このことが、後に大きな影響を与えていった、と今は思っている。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました